第二十七章 哲学より生まれた資本主義・社会主義(1)

 この「二十一世紀のイデオロギー」では、過去三回にわたって、資本主義及び社会主義がどのような経緯で発生し、そして発展・衰亡へと至ったかを順を追って説明しました。
今度は若干視点を変えて、二つの思想と近代哲学との関わりに焦点をあててみます。


近代思想の形成

近代哲学の発生は、その元をたどればルネッサンスに辿り着きます。
中世の長きにわたって精神と社会の両面から人々を支配していたキリスト教会の権威が、中央集権国家の成立や商業市民階級の台頭などによって揺らぎ始めたのに呼応して、古典文化からの摂取に重きを置きつつも、新しい時代の原理を模索する運動の中から生まれた文化を称してルネッサンスと言います。
また、ルネッサンス運動の影響の下、教会の腐敗や堕落を批判して、真の信仰を求めた運動が宗教改革です。
ルネッサンスと宗教改革の一番の特徴は、中世の封建制度やキリスト教会の束縛から逃れて、人間らしい生き方と真実を求めようという立場をとっているところです。
こうした人間を新しく見直そうとする動きは、人々の思考方法に大きな変化をもたらします。
神が中心の世界観から、人間が中心、人間が主体という世界観へと変遷するにつれて、人間が働きかける自然も従来とは違った視点で捉えられるようになりました。
中世においては、自然は神の恩寵に対立するものとして、そのあるがままの姿を観察し研究することは教会によって禁じられていました
ところが、ルネッサンスを経て思想的束縛から放たれることによって、人々は自由な精神の下、自然をありのままに観察するようになりました。
こうして自然研究が盛んになり、その過程において、自然現象のうちに存在する法則が発見され、それらを数学的に法則化するに至って自然科学が成立しました。
こうした自然科学の先鞭をつけた人物として有名なのがガリレイやコペルニクスです。
自然科学が社会に齎した成果は想像以上に大きなものであり、ついには自然科学的考察に基づいた法則を絶対真理と捉えるまでになります。
また人々の真理を追及する動きは、対象を人間の精神世界にまで求めるようになります。
こうしたプロセスから生まれてきたのが近代哲学です。