第十五章 前世紀までのイデオロギー(5)

20世紀のイデオロギーの主役(資本主義と社会主義)

20世紀の資本主義社会は、イギリスが衰え、アメリカが台頭することで、植民地間でのブロック経済から、自由貿易を最重要とする社会へと変容していきました。
アメリカもアングロサクソンの精神で活動する国家であり、表向きは植民地支配に代わって、経済力と軍事力によって世界の警察国家として支配することを目論んでいます。
一方で、ベルリンの壁崩壊などにより、社会主義は完全に崩壊状態ですが、何故このような状況になったのでしょうか。
アメリカが第三次世界大戦に勝利した訳ではなく、寧ろソビエトをはじめとする社会主義国家が、その内部疲労に耐え切れず自滅したとする見方が最も正しいでしょう。
中国は逸早く資本主義的経済運営−表向きは、社会主義的市場開放政策と銘打っている−を採り入れたお陰で難を逃れました。
社会主義陣営の崩壊は、権力を持った官僚特権階級が腐敗して、政治・経済面のまともな政策を打ち出す能力をなくしたことが最大の原因です。
社会主義の崩壊は資本主義の完全な勝利を指すのではなく、一啓蒙主義思想の自滅とみなすべきだという点に焦点を合わせるべきでしょう。
20世紀のイデオロギーの東西横綱であった資本主義と社会主義の番付が、21世紀に入って変化を来たしていることは確かです。
大産油国であることを盾にイスラム社会は資本主義に向こうを張っているし、アジアの雄である中国が急激に経済力を伸ばし、日本を尻目に資本主義の横綱・アメリカを資本主義の土俵において打ち負かさんばかりの破竹の勢いです。
20世紀の後半から、世界のイデオロギーの主役は、資本主義対社会主義の対立軸から、新たな対立軸を模索しはじめたようです。
新たな対立軸の正体は未だ見せておりませんが、その一瞥は、20世紀のイデオロギーの主役であった資本主義と社会主義のアキレス腱を堀起こすことによって見出せるのではないでしょうか。