第十二章 前世紀までのイデオロギー(2)

女性の人間復権

人類の文明は、概ね男性社会の文明でした。
しかしヨーロッパ社会の近代化における女性の活躍を見逃すことはできません。
世界に先駆けての近代化を推進したヨーロッパでは、女性の人間としての復権も重要なテーマでした。
原始共同社会における女性の役割は、子供を産み、育てるだけでは決してなかった。
共同社会(ゲマイン・シャフト)から利益社会(ゲゼル・シャフト)への変化における最大の要因は、蓄積の概念の誕生でしょう。
共同社会は狩猟社会であり、狩猟で得た食べ物は備蓄に適さず、その日のうちに食べ尽くさなければならなかったゆえ、平等分配の精神が根づいていた。
ところが農耕技術が発明され、穀類が人類の食べ物として採用されるようになった結果、備蓄の概念が誕生して、備蓄の才覚に差が生じ、利益社会(ゲゼル・シャフト)の概念の原点が誕生した。
その結果、支配階級と被支配階級、男性社会と女性社会の区分けが生じた。
共同社会(ゲマイン・シャフト)は、完全男女平等の社会でした。
従って、共同社会を目指すのであれば、男女平等の概念を基本に置くことが必要十分条件であることを忘れてはなりません。
イデオロギーとは(Ideology)、つまり、理想的な(Ideal)社会を発展させ、人類の将来を豊かなものにする為の基本的な仕組みを論じるものである筈です。
過去から現在に至るまでのイデオロギー論争の主役と、そのイデオロギーを実現する社会のリーダーたちはすべて男性でした。
富や権力の在所を議論の中心においたイデオロギー論争は、まさに社会の発展や人類の豊かさの片面のみを論じている。
社会の豊かさを図る尺度は富や権力と言った物理量の問題だけではなく、心の豊かさを計る秤が一方でなくてはいけない
20世紀までの世界で論じられ試されてきたイデオロギーの欠陥は、社会の基本である相対する男と女の存在を、バランス良く包含する仕組みを見出せなかったことにある。
その一番の要因は、過去からのイデオロギー論争において、私有財産の権利が男性のものだけであり、女性には許されなかったことを指摘しておかなければならない。
21世紀のイデオロギーは、男性と女性がともに社会の将来を考える仕組みを作り出すことから始めなければならない。

この近代社会に主眼をおいて、いわゆる資本主義が社会主義(共産主義とも言う)に勝利したと言われる20世紀末までを、次に総括してみましょう。