第八話 軟蘇の法

白隠さんは十五才で出家した

修行を積んでいた頃 肺の病になった

肺の病は 不治の病

病は肉体ある身において精神修養の最大の障害

精神修養する身でありながら 不治の病にかかるのは日頃の心構えが悪いから

白隠は正受老人という立派な禅師がいることを聞いて弟子入りした

そして不治の病を治す軟蘇の法を伝授された

軟蘇とは中国にいる大きな珍しい鳥のチーズのような巣のこと

頭に軟蘇を置いた状態を想像して座禅する

そして軟蘇が頭の暖かさで溶けてトロトロと下に垂れていく

頭から首 首から心の臓 心の臓から腸(はらわた)腸(はらわた)から丹田

丹田から膝 膝から足心へとトロトロと溶けた軟蘇が垂れていく想像をする

全身が溶けた軟蘇で覆われて何ともいえない心持ちになる

軟蘇の法とはこれだけのこと

だが不治の病は完治した

ある日 肺の病にかかった男が軟蘇の法を伝授して欲しいと白隠さんに請うた

お前の仕事は何かと尋ねたら 男は答えた

はい猟師でございます

猟師なら鳥を殺すであろう と白隠さんは男に尋ねた

もちろん殺しますと男は答えた

それなら軟蘇の法は効き目がないと白隠さんは答えた

それなら猟師に効く方法を伝授して欲しいと男は請うた

突然 白隠さんは猟師の頭に自分の小便をかけた

何をするのですか! と猟師は怒った

突然 白隠さんは猟師の頭に自分の糞をかけた

何をするか! と猟師は持っていた鉄砲を白隠さんに向けた

何を言うか!これが正真正銘の軟蘇だ 喝!

糞も己の一部と思わば いとおしく思えるじゃろう

この気持ちなくして 何処の軟蘇よ 喝!