第三十話 錬鉛術

錬金術とはそもそも医術であり 鉛や水銀という毒性のある金属の粉を薬にすることから生まれた

白隠が錬金術の名人と言われたのも自己の病気を克服する術を修得したからだ

病は肉体と精神の不調和からおこり 引いては肉体そのものに異常をきたす

だから病を治すには 肉体と精神の不調和をまず是正し その上で肉体を修理する

白隠は 精神の調和を禅定で成し 肉体の修理を錬金術で行った

医学の基本は まず精神の調和を計ることから始まる

金儲けの基本も まったく同じことだ

金儲けは 何のためにするか ここに重点が置かれなければならない

精神の調和を計るために金儲けをすれば いとも簡単に金儲けが出来る

武平はそこが分かっていない

自分の蔵の金を引っ張りだして それを増やすことばかり考えていた

障子から覗き見していた 白隠は 武平の家の者たちを呼んだ

そして 武平は 錬金術を修得しようとしたが 精神の調和を乱して 今

錬鉛術を修得した と説明した

せっかくの金が あれでは金になっておらん 毒物の鉛になり果てている

お前たち よく見ておくことだ

金は物ではなく 心の状態を表す尺度であることを