第三話 白隠さんの不始末−3

親父と娘は 子供をさらわれたと 奉行所に訴えた

奉行が出てきて 彼らに聞いた

さらっていった者は誰かと

松蔭寺の住職です と彼らは言った

奉行は 顔をひねって さらに聞いた

松蔭寺の住職と言えば 白隠和尚のことではないのかと

一瞬 彼らは ためらったが そうですと答えた

奉行は 嬉しそうな顔をして 言った

それは 願ってもないことだ あの御仁には 前から目をつけておった 

お前たちが証言するなら ひっとらえてつかわそう

不安になったふたりは 奉行に聞いた

あの和尚は 他に何か悪いことでもしたのですか

奉行は答えた

噂だけの話なので どうにも手がつけられぬのだが

お前たちと 同じように 子供がたくさん あの和尚にさらわれているらしい

訴えてきたのは お前たちが初めてだ これであの和尚の尻尾をつかんだわい

ふたりは さらに聞いた

どうして 他の連中は 訴えないのですか

奉行は 言った

わしにも よく分からんが あの和尚に 弱みを握られているらしい 

それで 訴えると その弱みが世間に知れることを恐れているらしい

その握られている弱みが これでやっと わしにも分かるわい

ふたりは 不安になってきた

さあ これから お前たち 証人を連れて あの和尚をひっとらえに行こうぞ

しばらく 用意するまで 待っておれ

奉行は 十人の部下を引き連れて行こうとすると さっきまでいたふたりが消えていなくなった

はて?と思って 部下に聞いてみた

部下は 事情を良く知っていて 答えた

そのふたりも 同じ弱みを持っていたのでしょう

奉行は言った

それなら 何故 訴え出たのか

世間を知らなかったからでしょう と部下が答えた

ここにおる者たちは 世間を知っておるのか

と聞く奉行に 一番下っ端の部下が答えた

はい 奉行以外は みんな知っております

奉行は 不安になって奥へ消えた

奥から 奉行の叫び声が聞こえた

ああ これで奉行もやっと一人前になられた 

これからは仕事も楽になると言って みんな喜んだ