第二十九話 武平の錬金術

しばらく武平は白隠のところにやって来なくなった

多分 一所懸命鉛を金にしようと苦心惨憺しているのだろう

白隠は 生来茶目っ気がある

武平の様子を見に行ってやろうと武平の家までわざわざ出かけた

門の前に立つと 女中のおふくがこっちを見ている

和尚さん うちの主人に何かしたんですか とおふくが聞いた

白隠は 訳が分からず 武平がどうかしたのかと尋ねると

部屋の閉じこもったままで 出て来ない そして中から笑い声が聞こえる

気持ち悪くて 家の者はみんな 武平の気がふれたと言っている

どれどれ わしが覗いて様子を見てみよう

白隠は廊下から武平に部屋の障子に穴を開けて覗いてみた

白隠は びっくり仰天して縁側にひっくり返った

どうしたんですか 和尚さん 

みんなが心配して白隠の下に寄ろうとすると 白隠が武平の部屋を指さした

障子の穴から家の者が見ると 何とそこには 小判の山に埋もれた武平がいた

武平が本当に錬金術を会得した と白隠が叫んだ

家の一人が 蔵に駆け込んで行き そして驚きの顔で戻って来た

蔵の金が無くなっている と叫んだ

白隠はほっとしたが 家の者は 武平が本当に気がふれたと思った