第十八話 白隠と武平

白隠和尚は七十七才 金持ち武平は八十五才

庄屋の連中から愚痴を聞いた白隠は 金持ち武平を見たくなった

そっと 隣村の武平の屋敷を覗くと 武平が家の者たちに話している声がする

お前たち よいな わしが家でお金の話しをしていると絶対に口外するなよ

また庄屋の連中が 白隠に言うかもしれんでな

そこで家の者が武平に聞いた

ご主人さまは 今まで通り お金お金とおっしゃられるのですか

当然じゃ 世の中で お金ほど大切なものはない

それでは どうして外では お金などに執着するな とみんなに言うのですか

よいか お金を貯める方法はなあ お金を要らん要らんと外で言って

ちびちび まきあげるのが一番じゃ

それなら どうして和尚の前では お金の話しをしてはいけないのですか

和尚はな お金を要らん要らんと言えば言うほど お金の話しをする御人じゃ

そうすると ついわしの本音が出てしまう まったく油断も隙もない坊主じゃ

それを 聞いた白隠は 家の外から 大きな声で叫んだ

武平さん わしは もうお前さんには金の話しをせんから 安心いたせ

ところで 少しお金を用立ててくれまいか やぼ用で必要なんじゃ

これは内緒にしておいて欲しいのじゃが 実は女郎に借金をしてな

十一(といち)の利息で如何じゃかな

武平は 家の中から 袋に入れた小判を放り投げた

それ以来 武平は白隠の高利貸しになり 今や白隠の借金は百両以上になった

その噂が 庄屋の連中の耳に入り 白隠に聞きにきた

白隠は 笑って答えた

それは武平とわしだけの内緒の話しだ くわしいことは言えない

それ以来 武平は 白隠の金づるになった