第十六話 珍重すべきは徳にあり

白隠がある藩の寺に逗留していた

藩の家来が白隠のところへ押し寄せて先祖伝来の家宝の軸を持って来た

先祖伝来の大切な家宝の軸だが 何を書いているかさっぱりわかりません

一本の軸を見たら 実に拙い字で白隠はこれが家宝かと失望した

ところがよくよく見ると 紛れもなく法祖父 大愚宗築禅師の手によるものだ

白隠は はたと感じた

書こそ拙いが これ程大切にされているのは筆者たる大愚禅師の徳によるもの

そして原宿の松蔭寺に戻った白隠はかねて秘蔵していた筆道の伝授書や

他の書画類を全部焼き捨ててしまった

感じたことは即 思い切りよく断行する白隠の真骨頂である