エピローグ  卒業式

三月二十七日、洗足小学校の卒業式だ。
健吾、浩、佳代、恵津子がそれぞれ小さな白い箱を胸に抱えて静かに立っていた。
太一の事件は一切表沙汰にせず、学校の人たちは、式次第通りに進めていった。
卒業式の最後に、卒業生が歌った。
「仰げば(あおげば) 尊し(とうとし) わが師(し)の恩(おん)
教え(おしえ)の庭にも はや いくとせ
おもえば いと疾し(とし) このとし月
いまこそ わかれめ いざさらば

互いに むつみし 日ごろの恩
わかるる後にも やよ わするな
身をたて 名をあげ やよはげめよ
いまこそ わかれめ いざさらば

朝ゆう なれにし まなびの窓
ほたるのともし火 つむ白雪(しらゆき)
わするる まぞなき ゆくとし月
いまこそ わかれめ いざさらば」
ハニワ先生は、細い目から泪を溢れさせ真っ赤な顔をして号泣していた。
健吾は、太一のお骨を胸に抱え、泪も流さず、胸の中の囁きに耳を傾けていた。
そして恵津子も佳代も浩も、同じ囁きを聞いていた。
それは、遠いところからの太一の囁きであることを彼らはみんな知っていた。
恵津子が言った、「さようなら!」
浩が言った、「さようなら!」
佳代が言った、「さようなら!」
そして健吾が、「太一。さようなら!」と言うと、太一の声が胸に囁いた。
「さようなら!は静かな響き
こころの中は燃える炎が消える瞬間
別離とさようなら!は紙一重
たのしいさようなら!
かなしいさようなら!
うれしいさようなら!
いかりのさようなら!
だけどさようなら!の響きは淋しい
それはあなたが独りだから
一人は二人になれる
独りは永遠の一人
そこに自由への解放がある
もしあなたが自由を欲しいなら
独りになる為 さようなら!を言わなければならない
さようなら!
あなたに さようなら!
わたしに さようなら!
そして ・・・・・・!」

「さようなら!」―完―