第四章  最後の冬休み

いよいよ最後の冬休みがやって来た。
十二月二十四日から一月十日までの二週間ちょっとだが、垣内家、谷山家、上村家、大野家、岩田家の親たちの提案で正月元旦に一堂に会することが決まった。
十二月二十四・五日のクリスマスは各家庭とも、クリスチャンではなかったので、一切何もしないで普段と変わらないようにした。
海外の経験が多い恵津子の父の筆一が言い出したのだ。
「中国は今でも陰暦で正月は二月だし、アラブの国は、それぞれの暦を採用しているのに、キリスト教信者が世界で一番少ない日本が、クリスマスだと言って騒いでいるのは異常だとキリスト教国からも思われています。彼らにとっては十二月二十五日は特別の日ですが、キリスト教徒でない我々には、何の感傷もありません。それをクリスマスだと言って騒ぐのは彼らに対して失礼だと思います。我々にとっては、やはり正月が特別なんです。ところが逆に正月元旦から店を開けたりする傾向が出て来ています。これはキリスト教国でクリスマスの日に働いているのと同じです。そういう点でも、この国は、かなり重症だと思います。正月元旦にみんなで日本の年明けを祝いませんか」
筆一の提案に政治家の佳代の父親・武吉が神妙な面持ちで答えた。
「まったく政治家がだらしない為に、日本の国を間違った方向へ行かせてしまいました。これこそ、イエスではないですが磔刑ものです」
そして年が明けた正月元旦、みんなは岩田家に集まった。
「おす!」
健吾たち男の子は、照れるらしく、いつもと同じ調子だった。
「明けまして、おめでとう」
さすが女の子は六年生にもなると、ませている。
久しぶりに、奥多摩以来のメンバーが勢ぞろいした。
総勢二十三人だ。
三つの和室を抜いて、二十三人の席が用意してあり、それぞれの席にお膳が置いてあった。
女性たちは、大晦日から岩田家で準備に大わらわで、その間に男の連中で餅つき大会をやったのだ。
子供たちは初めての経験で、感激していた。
「こんな面白いことを、昔の人はやっていたのか。なんで今はやらないんだろう?」
太一はしきりに首をかしげて、「お兄ちゃん、来年からは必ずやろうよ、ねえ!」
と兄の浩にねだっていた。
「そうだなあ。いつからみんな止めてしまったんだろう?」
「浅草や、上野あたりでは今でもやっているらしいよ」
栄一がみんなに教えてやった。
「日本の文化を悉く消し去ろうとしている連中がいるんだろう。ねえ大野さん?」
武吉は考えながら答えた。
「そうだね。何か訳の判らない政党がたくさん出て来てからかな!日本の文化を守ることが罪悪のように言っているからね。それと、政府や行政も、金儲けに忙しくてそんなことに構っている暇がないんだろう」
そして大晦日遅くまで、みんなで用意して、それぞれの家に帰ったのは、年明けの直前だった。