第五章  戦後教育の落とし穴

戦前までは五人以上の兄弟・姉妹の家庭は当たり前で一人子の家庭というのは親に何かの理由がある場合でしかなく、現代で最も多い二人・三人兄弟・姉妹の家庭というのはほとんど無かった。
二人・三人兄弟・姉妹の家庭というのは戦後の家庭の特徴だが、ここにもアメリカを中心とした欧米白人世界の世界支配意識が強烈に反映されている。
日本の人口は戦後も伸び続けてきたと錯覚しているだけで、いわゆるベビーブーマー世代というのは日本では昭和二十二年から二十五年までの三年間だけであるのに、アメリカでのベビーブーマー世代は一九四五年から一九五五年までの十年間を指す。
アメリカの世界戦略がここにも垣間見ることができる。
彼ら白人種の世界支配戦略は、実に論理的で用意周到な長期的展望にたっている。
動物の世界では当然のことである、種の保存則の最大要因は数の多さ、すなわち人間で言えば人口である。
強い種というのは数が多いことを指す。
腕力的には人間よりもはるかに強いライオンやトラと言った種が人間社会を襲ったことなど絶対ないのに、イナゴや蟻といった一匹では簡単に踏み潰すことができる種が、人間社会を襲うことがあるのは、その数が爆発的に増えるからである。
欧米白人世界にとって、被支配人種であるべき有色人種の中で、唯一の脅威が中国であるのは、その圧倒的な人口にある。文明の発達した十数億の人口というのは、いくら科学が飛躍的進歩を遂げても、短期間で達成できるものではない。数千年の期間を要する。
中国のポテンシャリティーの大きさがここにあることを、彼らは十分知っているのである。
今、世界の人口は毎年六千万人ずつ増加していると言われているが、ほとんどがアフリカの未開発国で、先進国は逆に減少している。
支配人種と被支配人種で区分けすれば、被支配人種が増加しているだけだと、彼らは思っている。
有色人種の国で、人口が一億を超えるのは中国、日本、インドネシアだけである。インド、バングラデッシュは欧米白人種のルーツであるアーリア系だから、彼らにとっては有色だとは思っていない。
またブラジルは有色人種蔑視の最たる国であることを知らない人が多い。
結局、彼ら欧米白人種にとって、常に警戒しておかなければならないのが、この三つの国であり、経済的には中国と日本であり、インドネシアは華僑の存在と、イスラム教という不倶戴天の敵である宗教だ。
近代歴史を俯瞰してみると、中国と日本が動き出すと欧米白人世界がヒステリックになって、同じ白人種間で我こそはの先陣争いの結果、共食いをし始める。結局は中国・日本という餌食の争奪戦が主たる目的なのである。
大戦後、日本はアメリカという白人国家によって洗脳され、中国はソ連という白人国家によって洗脳された。
しかし、中国は一九六十年代に、この白人世界の落とし穴に気づきソ連と袂を分かった。
しかし、日本は半世紀を過ぎても未だその催眠状態から覚めていない。
栄一は、この日本の現状に危機感を持っていた。
「この国はアメリカの属国ではなく、奴隷になってしまっている。湾岸戦争から、アメリカはその本性を見せはじめ、テロ報復戦争で完全に世界支配の意図を露にした。その時の大統領が父子というのも皮肉なものだ。そのことを今の日本政府は気づいているのだろうか?」
栄一は大野武吉に会ってみたくなった。