第三話 善いは悪くないこと【時刻:2023年1月29日午前0時30分】

今日は、お父さんが、この世で人間が一番大切に守らなければならないと言ってる、『鬼の掟十七条』について、わたしなりに理解していることを、お話してみたいと思います。

第一条 凡そ、人間といえども他の生物と変わりなく地上に生かされているものであることを認識し、他の生物と共存する精神を失わないこと。

こんなこと、わたしには当然のことのように思うのですが、お父さんは言いました。
「人間が、自分たちと他の生物とは違うもので、自分たちの方が優っていると思うようになったのは、もう数十万年も前のことで、善いことと、悪いことの区別をするようになってからだよ。そして、考えることを繋ぎ合わせる力を持ったんだ。他の生き物も考えることはするけど、それは過去のことを覚えているからで、人間だけは未来のことを考えるようになったところが、一番違うところだよ。このことをよく覚えておきなさい」
わたしは、言いました。
「デビは、善いことと、悪いことの区別がいまでもわからない。これが善いこと。あれが悪いこと。というのでは無く、みんな善いことのように思うので、区別が出来ないの」
お父さんは、微笑ながら嬉しそうな顔をしました。
「デビのようにすべて善いことのように思えると、他の生き物のような生き方をすることができるんだよ。十七の鬼の掟の最初に必ず、『凡そ』とつけたのは、そのことを示しているんだ。『凡そ』というのは『すべて』という意味だから、よく覚えておきなさい」
わたしは、思いました。
『そうなんだ!凡て善いことしかないんだ!悪いことなんて人間だけが勝手に決めただけで、他の生き物たちにとっては、生きていることが凡て善いことなんだ!なあんだ!それじゃデビが思っていたことと同じでよかったんだ!』
すると又、わたしの頭に疑問が湧いてきたので、お父さんに訊きました。
「お父さん。動物が考えるということは、過去のことを覚えているだけで、人間は未来のことを考えている。と言ったけど、デビにはむつかしくてわからない・・・」
お父さんは、「それも、よい質問だね」と言って微笑みました。
「他の生き物たちが考えるというのは、経験から覚えた繰り返しであって、考えるというより憶えていると言った方がいいかも知れないね。他の生き物が注意深く生きているのに対して、人間は怯えて生きている、とても臆病な生き物なんだ。だから未来のことを考えてしまう。本当は、考えるということは、過去のことを思い出すことだったのに、人間の臆病さによって、未来のことを思うことが考えることになってしまったんだ。そこが他の生き物の生き方から、人間だけが離れていった一番の理由なんだよ。臆病が原因なんだ。臆病でなければ、未来のことなんかを思う必要がないはずだよ。デビは、そう思わないかね?」
わたしは、何となくわかったような気がしました。
「じゃあ、人間が考えているのではなく、他の生き物が考えて生きているんだ。人間は、ただ恐くて生きているだけなんだね!」
お父さんは、「うん、うん」と嬉しそうに肯きながら言いました。
「そうだ、そうだ。本当にそうだね。人間は何も考えてなんかいなかったんだ。ただ怯えて生きてきただけなんだ。いろいろと人間だけが創ってきたが、あれはみんな臆病から生まれたもので、臆病でなければ、あんなものは必要のないものだったんだ。だから今ごろになって人間が創ってきた、いろいろなものが地球を傷つけているんだ。地球を傷つけるようなものが、必要なものであるはずがないからね。デビの言っていることは、本当にそうだ!」
わたしは、鬼の掟第一条の意味がよくわかったような気がしました。
みなさんも、わかったでしょう?