第二十話 地獄に落ちる人【時刻:2023年3月20日午前0時11分】

近頃すごく感じるのですが、お父さんがどんどん変化しているのです。
「鬼神」を書いている所為でしょうか、体が透明になって行くような感じがしてなりません。
わたしの父のことで恐縮ですが、心が無くなって行くと、体が透明になって行くのでしょうか?
「心が透明になるのも、二つの正反対の道があるんだ、冬子。黒く濁った透明さと、真っ白な透明さと二つね。よく憶えておくんだ。だから心が透明になるだけで良いというものではない。真っ白く透明にならないとね・・・」
お父さんが言いました。
冬子は意味がよくわかりません。
「冬子は、お父さんの体がどう見えるんだ?」
「真っ白な透明さよ」
わたしは正直に答えました。
「いつ頃から透明に見えるようになったかね?」
よく考えてみると、ずっと前から、記憶が始まった時から、お父さんの体が透明に見えていたことを思い出しました。
「もうずっと前から、そうだった!」
お父さんにそう言うと、「だけど、前は黒い濁った色だっただろう?」と言われて、ちょっと迷ったのですが正直に言いました。
「うん、そう。前は黒く濁った色ばかりで、すごく怖かった」
「今はどうだい?」
わたしは明るい表情で答えました。
「今は真っ白で、全然お父さんのこと怖くない!」
そこで、お父さんの言いたいことがやっとわかりました。
怒りをたくさん持つと、体は確かに透明になっていくけど、黒い濁った色が却って見えるんです。
あの頃のお父さんは、怒りの塊のような人だったからでしょう。
今のお父さんは、世の中にたくさんいる変な人に対しても怒らないんです。
「可哀想に」と言うだけです。
だって、そういった変な人は、必ず地獄に落ちているんです。
だから、「可哀想に」と言うんです。
変な人と出遭っても怒らないこと。
変な人は可哀想な人なんですから、怒らずに、好きになってあげることが大切なんですね。
みなさんそうでしょう。