時刻:2023年1月28日午前1時

お父さんが、わたしに一番大切なことだと教えてくれたのは、掟というものです。
掟という意味が最初わかりませんでした。
「してはいけないこと」
とお母さんに、教えてもらって、やっと理解できました。
わたし達人間の子供は、「してはいけないこと」でしか判断が出来ない悲しい動物だと、お父さんは言っていました。
他の動物はみんな、好い事、正しい事をやったら褒められるものさしを持っているのに、人間だけは、悪い事、間違った事をやったら叱られるものさしなので、いつも悪い事、誤ったことばかり考えてしまう癖を持っているそうです。
夏子が、いつもお母さんに叱られているのを見ていると、そうだと思いました。
夏子は、お母さんに叱られない為に、してはいけない事ばかり考えているのです。
そして、してしまうのです。
「デビ。どうして?」
夏子が、わたしに訊いてくるのですが、わたしは教えてあげることが出来ません。
それで、お父さんに訊ねました。
「デビ。それはいい質問だ」
お父さんは、そう言って、一枚の紙を、わたしにくれました。
『鬼の掟十七条』と書いてありました。
「デビ、よくわからない」
とお父さんに言いました。
「動物はみんな、この十七の掟、ルールを守って生きているから、いつも安心して生きているんだ。人間は、自分達で勝手に掟、ルールをつくり生きているけれど、鬼の掟の方が上だということを知っているから、安心して生きていけないんだ。だから『してはいけないこと』をいつも自分に言い聞かせておかないと不安で仕方ないんだ」
「ふうん、人間って頭が悪いの?」
お父さんに訊くと、
「頭が一番良いようで一番悪い動物かも知れないな」
と言ってました。
わたしは、すべてがまだ、ぼっとした感じですっきりしないのですが、もう少し歳をとったら解ってくるのだろうと、自分を慰めていました。
そこで、お父さんが一番大切なことだと言っていた、『鬼の掟十七条』を覚えるようにしました。
そして、お父さんがくれた紙を、いつも体から離さず大事に持っていて、暇を見つけては、少し読んでみたのです。
『何だ!こんなこと、あたりまえのことじゃないの』
わたしは、思いました。
『何で、こんなあたりまえのことを、わざわざ覚えようとするのだろう?』
それで、お母さんに訊いてみました。
「そうね、冬子ちゃんぐらいの時に、この鬼の掟を教えてもらっていたら、冬子ちゃんのように、何も難しいことはないんだけど、みんな大人になってもわかっていない人達が多いので、こうやって教えてあげないと何もわかっていないのよ」
わたしは、お母さんの話を聞いて思いました。
『やはり、人間は頭の悪い生き物なんだ』
わたしは、『鬼の掟十七条』を暗記出来るよう一所懸命です。
みなさんは、『鬼の掟十七条』を知っていますか?
お父さんがデビルと呼ばれたのも、この鬼から来ていることを初めて知ったのです。