第四十七話 豊かさ=不足

人口増加は近代社会に入ってからであり、特に二十世紀に入ってからの異常なまでの増加は、それ以前の増加の内容とはまったく違います。
近代社会に入ってからの人口増加は先進社会におけるものであったのに対し、二十世紀に入ってからの異常増加は後進国におけるもので、先進国はむしろ減少に転じているのです。
この変化の原因は一体何でしょうか。
「支配・被支配二層構造」、「世襲・相続の差別制度」と差別・不条理・戦争が不可分の関係にあり、且つ、補完関係にありながら二律背反関係にもある自己矛盾がその原因なのです。
近代社会の黎明期は、不可分の関係にある「支配・被支配二層構造」、「世襲・相続の差別制度」と差別・不条理・戦争が補完関係にあったことが、先進社会にエリート主義、啓蒙主義、つまり、一般大衆の愚鈍さに対するアンチテーゼとしてのエリート主義こそが差別・不条理・戦争を克服する方策であり、そのための手段が「支配・被支配二層構造」、「世襲・相続の差別制度」であったから、モノの豊かな先進社会において人口が急増加したのです。
言い換えれば、モノの豊かさが人口の増加を促進させた時代であったわけです。
ところが、二十世紀に入ってから事態は一変しだした。
不可分の関係にある「支配・被支配二層構造」、「世襲・相続の差別制度」と差別・不条理・戦争が二律背反の関係に反転した。
一般大衆の愚鈍さに対するアンチテーゼとしてのエリート主義、啓蒙主義が社会主義、共産主義に発展していき、ミイラ取りがミイラになってしまい、冷戦という、一見イデオロギーの対決に見えて、実は支配者同士の覇権争いという自己矛盾を抱えた陰湿な争いになってしまった結果、モノの不足した後進国での人口が爆発的に増加し現在に至っているのです。
言い換えれば、モノの不足が人口の増加を促進させた時代であるわけです。
モノの豊かさも、モノの不足も共に人口を増加させるわけです。
逆に言えば、モノの豊かさも、モノの不足も共に人口を減少させるわけです。
ここに大いなる真理が垣間見えます。
すべての種が、増えもしないし、減りもしない。
自然の食物連鎖の法則の絶対的な掟であります。
何故なら、すべての種が「食う」立場と「食われる」立場を共有しているからです。
ライオンに食われるシマウマは草を食い、シマウマに食われる草は土を食い、草に食われる土はライオンを食う。
連鎖の意味がここにあり、連鎖とは言い換えれば円回帰運動に外なりません。
不増不減。
すべての種が、増えもしないし、減りもしない。
モノの豊かさも、モノの不足も共に人口を増加させる。
モノの豊かさも、モノの不足も共に人口を減少させる。
問題は、モノの豊かさ、モノの不足にある。
自然社会で生きるものは、今日の糧だけを求め、明日の糧は求めない。
人間社会で生きるものだけが、今日の糧のみならず、明日の糧も求める。
だから、モノの豊かさ、モノの不足という、一見、二律背反関係に見えて、実は補完関係にある自己矛盾を生み出すのです。
モノの豊かさ=モノの不足であることを知ることです。