第三十四話 階級社会の狙い

人間社会だけにある「支配・被支配二層構造」と「世襲・相続の差別制度」は更に階級制度を生みだした。
世界最古の階級制度と言われているインドのカースト制度が、宗教の教典(ヴェーダ)の中で生まれたのは実に象徴的です。
宗教が差別を奨励する。
ヒンズー教、ジャイナ教、仏教はインドで生まれた宗教なのですが、これらの原点にあるのが今から3千年前に誕生したバラモン教であり、その教典をヴェーダと言います。
キリスト教、イスラム教の原点にあるのがユダヤ教であり、その教典が旧約聖書であるのとよく似ています。
このヴェーダの中に、カーストという階級制度が記述されているのですが、その目的は、支配民族アーリア人と被支配民族ドラビダ人の確立にあったのです。
ペルシャ・アフガニスタンからインド亜大陸に侵略してきたアーリア人の支配者層が、同じアーリア人の被支配者層や先住民のドラビダ人を支配する方便として考え出したのがカーストという階級制度であり、宗教とは支配者側のための宗教であり、被支配者側にとっては束縛以外の何者でもなかったのです。
関ヶ原の合戦で勝利した徳川家康が江戸幕府を開いた時、最初につくったのがインドのカースト制度を真似た「士農工商」という階級制度ですが、「支配・被支配二層構造」を確立するには、力だけでは無理であることを逆に露呈しています。
アーリア人の支配者たちにしても、徳川家康にしても、最初は力づくで支配者の地位を獲得したのですが、「世襲・相続の差別制度」によって長期間に亘って「支配・被支配二層構造」を堅持しようとすると、力づくでは無理であり、質的優位性=量的劣位性、質的劣位性=量的優位性という鉄則が厳然と働くことを知っていたからです。
そこで実に姑息な手を考え出した。
一番下の階級にいる者はどうしても上に反感を持ち、いずれ反感のエネルギーが爆発する。
そこで、更に下の階級をつくって、上の階級への反感エネルギーを削ぐ。
そして、最下層にはいくら生まれ変わっても最下層から抜け出ることができない先住民を置くために、輪廻転生説までつくり上げたわけです。
それが階級制度の狙いです。
インドのカースト制度における最下層には、先住民のドラビダ人が不可触民アチュードとして置かれた。
11億いると言われるインド人の1億が今でも不可触民アチュードとして差別され、10人に1人のらい病患者、4人に1人の結核患者を構成しているのは彼らなのです。
日本の「士農工商」における最下層には、アイヌ、蝦夷、夷、熊襲といった日本の先住民が穢多として置かれた。
いまだに部落問題として多くの課題を残し、逆差別問題まで発展してしまっている日本社会。
宗教が支配側、つまり、数が少ない側(量的劣位性=質的優位性)に立ち、被支配側、つまり、数が多い側(量的優位性=質的劣位性)に立っていない証明です。