第三十二話 差別・不条理・戦争

自然の社会では、「支配・被支配二層構造の社会」や「世襲・相続の差別制度」といったものは一切なく、人間社会だけにあるものです。
人間社会だけにある、差別・不条理が無益な戦争を惹き起こし、挙句の果てに、母なる大地・地球までも傷つけるという暴挙を繰り返すのは、「支配・被支配二層構造の社会」と「世襲・相続の差別制度」が原因です。
“自然の生き物の社会にも、支配者、つまり、オスのボスがいるではないか”と反論される方がいるでしょうが、それは、人間が勝手に思っているだけで、オスのボスは実はボスではなくて、外敵を守る防衛長官であるだけです。
外敵を守る防衛長官は戦士ですから、強くなくてはならない。
だから最初に食事をさせ、メスたちは防衛長官の強い精子を得て、グループを守らなければならないため、一見のハーレムを形成しているのです。
オスのボスらしき者といえども、自分の子供をボスに継がせる慣習など一切ないのが、彼がボスでない証拠です。
ライオン社会では、食事の狩りをするのはメスライオンで、オスライオンは狩りに一切参加しません。
彼の仕事は、外敵からグループを守るだけです。
わたしたち人間社会にもある、男が外に仕事に出て、女は家で食事・掃除・洗濯といった家事をするのも、メスライオンが狩りをする、つまり、食事の支度をして、オスライオンは外敵と戦うという自然社会の慣習を踏襲しているからであり、更に、人間という動物は極めて弱い生き物である証明です。
メスライオンはおなかに子供が宿っていても狩りをします。
それは彼らが極めて強い生き物、つまり、肉食動物だからです。
人間という動物は極めて弱い生き物、つまり、草食動物だから、狩りなどできず、草木を食べてしか生きていけない。
そんな極めて弱い生き物が、自己防衛本能から二本足歩行に変えた結果、偶然にも知性、つまり、考える力という強力な武器を手に入れ、自然社会を支配するようになった。
外敵がいなくなった人間社会の防衛長官であるオスは、これでは自分の仕事がなくなってしまう。
そこで内敵をつくることにした。
つまり、仲間争いです。
差別・不条理・戦争の遠因がこの仲間争いにあります。
そして、いつの間にか、防衛長官のオスが、総理大臣のメスに取って代わって総理大臣になってしまい、オス社会が誕生したのです。
人間社会だけにある、「支配・被支配二層構造の社会」と「世襲・相続の差別制度」は、人間社会だけがオス社会になったためなのです。
メスは自分で子供を生むことができるから、自己保存本能欲を満たすために世襲・相続の観念など不要なのですが、オスは自分の子供を生むことができないから、自己保存本能欲を満たすためには世襲・相続の観念が要るのです。
こうして、差別・不条理・戦争といった無益な争いが、人間社会だけに生まれたのです。
ライオンは、食事をして空腹が満喫されれば、そばをシマウマが通っても無益な殺生はしません。
政治や経済問題として解決をいくら図っても、人間社会だけにある差別・不条理・戦争が絶えないのは、人間社会の生い立ちにおいて、ボタンの掛け間違いがあったことに気づかないからです。
新田哲学が「人類の課題」の最も核心に迫るテーマです。