最後の手紙

懲りない男と女

初めての恋は 無知な恋
相手を思いやる余裕がない
だから必ず壊れる
二番目の恋は わがままな恋
初めての恋を引きずっている
だから自分から壊す
三番目の恋は 反省の恋
壊し壊され痛みを知る
だから自然に消えてゆく
四番目の恋は 愛の恋
相手を思いやる優しさがある
だから絆が生まれる
五番目の恋は 結婚の恋
何かどこかでひっかかる
これでよいかと思う恋
はかない恋ほど思い出の色は濃い
惰性に陥った恋ほど思い出の色は薄い
だけど思い出は 愛の蜃気楼
薄いぼやっとしたのが蜃気楼
愛とは恋の蜃気楼
初めが恋で 最後が愛
思いどおりにならない恋 
これが男の恋の物語
女の恋の物語はどんでん返し
誰かが言った
男は最初の男になりたがる
女は最後の女になりたがる
無理なはなしをする男と女
それでも懲りない男と女

軍司は、艶子から手紙を送ってくるだろうと思っていたが、一週間経っても来ない。
「迷っているのかな?」
内心そう思う軍司だったが、それから三日後に艶子からの手紙が届いた。
「軍司 様
先日は、思いがけない、あなたとの再会に、わたしは迷いました。
あと半年前だったら、わたしはあなたの胸に飛び込んで行ったでしょう。
それぐらい、あなたのことを忘れられなかったのです。
わたしは、近々結婚をします。
相手は同じ学校の先生をしている人です。
軍司君のように格好良くもないけど、真面目でわたしのことを想ってくれています。結婚を申し込まれた時、随分悩みましたが、彼の誠意を受けることに決めました。
この前、軍司君が帰る間際に大阪の彼女のこと聞いたでしょう。
あなたは、以前と変わっていないと言っていましたね。
その時、わたしは胸が熱くなって泣いてしまいました。
出来れば、あなたの胸に飛び込みたい。
だけど、あなたとわたしは、こうなる運命だったのです。
あなたは、本当にフェアーな方です。
わたしが自衛隊を罵った時に、あなたは、いつかこの世の矛盾を正す時が来るまで、勉強をして実力をつけておくのが、若者のやるべきことです。と言われたことは正しいと思います。
あなたは、大阪の彼女と決着をつける前に、わたしに逢いに来てくれた。そしてまた逢えるかな。と言ってくれた。
本当に、あなたはフェアーな方です。
あなたみたいな人が立派になってくれたら、わたしの自衛隊嫌いもなくなるでしょう。
本当に、大阪の彼女と添い遂げることが出来たらいいと、心から祈っています。さようなら。艶子」
それから半年後、軍司は大学を卒業して、青春の決着をつけるために大阪に帰った。
阪神ホテルの喫茶店で二人は向かい合っていた。
「もう会いたくないの。電話もしないで欲しいの」
「わかった」と軍司は言って、伝票を持って立とうとしたら、「お茶代も出して欲しくないの」と言って、彼女は自分の分を出して出て行った。
「これで、青い青春は終わった」
大きな声で叫んだ軍司は、晴れ晴れした心境だった。

−終わり−