二年後の再会

嬉しい再会

時の流れは 
すべてを綺麗に洗い流してくれる
恨んだ思いも 消えたいま
あなたは わたしの傍にいる
もう少し早く再会していたら
わたしは ここにいないで
あの人のとこ

時の計らいは 
すべてを優しく洗ってくれる
好きな思いは 今もなお
あなたは あの人の傍にいる
もう少し早く再会していたら
わたしは ここにいないで
誰かのところ


時の思いやり 
人を美しく描(えが)いてくれる
美し(うるわし)思い 今もなお
ふたりは たがいの道を行く
もう少し早く再会していたら
ふたりは たがいに解り
離れて一緒


四年生になった軍司は、車で大学のある武蔵小金井に通っていた。
就職も決まり、卒業論文のために、ある企業の工場の品質管理をテーマにした。
そして、埼玉の蕨市にある工場に訪問することが多かった。
大学から直接、蕨の工場に行くなら、練馬の石神井経由で行くのだが、横浜からだと環状七号線に入って行かなければならない。
渋滞で有名な道路で、たまたま渋滞に出会った場所が板橋だった。
陸橋を越えて行くと、板橋身体障害者学校という看板が目に入った。
その日は、そのまま蕨の工場に行った軍司だったが、何か思うことがあった。
一週間、考え抜いた末、
「おい、ブス。ちょっと付き合えや」
早稲田大学一年生の木下のあだ名がブスと言う。
「どこへ行くんですか?」
「まあ、ええから付いて来いや」
と言って、車に乗った。
車の中で、艶子とのことを木下に話して、板橋身体障害者学校に行くと伝えた。
「僕がいたら返って邪魔なんと違いますか?」
「いや、何となくお前が横にいた方がいいような気がする。理由は分かれへんが」
この前見つけた看板を目当てにして板橋に向かった。
「ありましたよ、看板が」
軍司は、ハンドルを切った。
結構新しい学校が目の前に現れた。
「お前は、車の中で待っててくれ」
そう言って、彼は玄関の中に入って行った。
「すみません、どなたかいらっしゃいませんか?」
用務員のような人が出て来た。
「すみません。こちらに川村艶子先生はいらっしゃいますか?」
「はい、いらっしゃいます。ちょっと待ってください。お呼びして来ますから」
一分もしないうちに、艶子が、以前と変わらない表情で出て来た。
「軍司君!一体どうしたの?よくここが分かったわね」
事情を説明すると、納得した様子で、「ちょっと待ってね。すぐに出るようにするから」
と言って奥へ消えて行った。
服を着替えて、化粧もして出て来た艶子は、「用務員さん。今日はちょっと急用ができたので、帰ります」
と言って、軍司と一緒に玄関を出た。
「あの、車で来てるんだ。後輩も一緒なんだけど・・・」
表情一つ変えずに、「そうなの、それじゃわたしのアパートに行きましょう。お姉さんに連絡して、夕飯の支度してもらうから。彼女も軍司君が来たと言ったら喜ぶわよ」
車に乗った三人は、艶子の案内で二階建てのアパートに着いた。
「さあ、どうぞ上がって。木下さんもどうぞ。狭い部屋だけど、我慢してね。その内にお姉さんが食べ物を買って来てくれるから」
それから何時間、四人で話しただろうか、時刻はもう午後九時を過ぎていた。
「それじゃ、あまり遅くまでいるといけないから帰ります」
軍司の言葉で艶子は、キリッとした表情になって、「お姉さん、わたし送ってくるから」
アパートを出た三人だが、軍司と艶子は車の方へ行こうとしなかった。
気を利かした木下が、「僕、車の中で待っていますから、ごゆっくり」
と言って、車の方へ行った。
二人きりになると、何を話していいのかお互い分からなかった。
「また逢えるかな」軍司から切りだした。
しかし艶子は答えなかった。
「大阪の彼女とは、どうなの?」
今度は軍司がしばらく答えなかったが、「以前と同じ状態だよ」と言った。
「そう」と答えた艶子は明るい表情で、「軍司君はまた一層大人になったわね。ありがとう。本当に嬉しかった。以前と同じ寮でしょう。わたしから連絡するから・・・」
「うん、それじゃあね。今日は後輩まで、ご馳走になってありがとう。僕も就職が決まって、多分大阪に帰ることになると思うけど・・・さようなら」
艶子の目に光るものを感じたのは、軍司の独りよがりだったのだろうか。
帰る車の中で後輩の木下がしんみりと言った。
「まだあの人、軍司さんのこと好きなんですよ」
しかし軍司は首を横に振った。