第五十六章 二つの宇宙

見えない宇宙が実在するのである。
聞こえない宇宙が実在するのである。
匂えない宇宙が実在するのである。
味わえない宇宙が実在するのである。
触れない宇宙が実在するのである。
つまり、
五感で感じられない宇宙が実在するのである。
言い換えれば、
止まっている(静止している)ものが実在するのであって、実在するものは見えないのである。
動いている(運動している)ものは実在しないのであって、実在しないものが見える、つまり、映像である。
そして、
止まっている(静止している)ものが実在するのであって、実在するものは聞こえないのである。
動いている(運動している)ものは実在しないのであって、実在しないものが聞こえる、つまり、音である。
そして、
止まっている(静止している)ものが実在するのであって、実在するものは匂えないのである。
動いている(運動している)ものは実在しないのであって、実在しないものが匂える、つまり、匂いである。
そして、
止まっている(静止している)ものが実在するのであって、実在するものは味わえないのである。
動いている(運動している)ものは実在しないのであって、実在しないものが味わえる、つまり、味である。
そして、
止まっている(静止している)ものが実在するのであって、実在するものは触れないのである。
動いている(運動している)ものは実在しないのであって、実在しないものが触れる、つまり、感触である。
まさに、
実在する宇宙とは、“静止の暗闇と沈黙と無臭と無味と無感触の宇宙”に他ならない。
映像の宇宙とは、“運動の光と音と臭と味と感触の宇宙”に他ならない。