第九章 悪と善

死という概念を、図らずも人間の想いに植えつけてしまったわたしが一番の責任を負うべきなのでしょうか。
循環のエネルギーシステムにほんのちょっと小手先を使ってしまった結果、知恵が働く人間が死に対する恐怖から逃れんと自己保身のために無理やりエネルギーを独占しようとして、殺すという概念を創ってしまった。
それが、地球そのものを傷つける羽目になってしまったのみならず、生と死、よろこびと悲しみ、幸・不幸・・・という2元論の宇宙の法則を人間に気づかせてしまったのです。
しかも、間違った見方をしてしまったのです。
2元論は、本来一種類の同質のものが、ある次元において、正と負、プラスとマイナス、表と裏といったふたつの形態で表象されることがその本質なのです。
もともとはひとつであり、1元論であるのです。だからどちらが欠けても存在できない概念なのです。
ところが、人間は正は欲しいが負は要らない、プラスが欲しいがマイナスは要らない、表は欲しいが裏は要らない、生は欲しいが死は要らないと間違った見方をしてしまったのです。
そこから、本来生死の概念がなかったのと同じで、善悪の概念などなかったのに人間だけには生まれてしまった。
この2元論には間違った理解をすると大きな落とし穴があるのです。
一方だけを取ってもう一方を拒否すれば、結局両方共拒否した結果になるという原理があるのです。
両方とも拒否することは、存在するということを拒否していることなのです。
あきらかに自己矛盾を生んでしまうのです。そこのところが、いくら知恵があっても所詮人間なのか解っていないのです。
今や人間同士で殺し合いをやっている彼らには間違った善悪の概念で凝り固まってしまって、自分たちの都合の良いことは善、都合の悪いことは悪となってお互い善を主張しておる。
これでは、ますます底なし沼に沈んでいくだけです。彼らだけが底なし沼に沈んでいくならば、わたしも労作が要らなくて楽なのですが、地球そのものを道づれにしようとしているから問題な訳です。わたし自身の問題にかかってくる。
この地球のへそにあたる日本に降り立ったとき、暗澹たる思いでいたわたしでしたが、一点の光を見つけたのです。
その頃、この日本の地を統一し支配していたひとりの人間がいました。
彼は、この宇宙の2元論を正しく理解していました。
彼にとって悪は善、善は悪という原理が解っていました。
しかし、普通の人間には、そういう彼の考えがまったく理解できなかったようで、非常に恐れられていて、普通の人間では、恐いものは悪なのですから、彼は悪人、いや極悪人にされていたのです。
わたししか、彼を理解することが出来なかったのです。
そして、彼を見殺しにしてしまったのです。
何度懲りても、また間違いを犯す、これでは人間を非難する資格などありません。
やはり、勉強が足りないようです。なんとかしてもう少し人間よりましな「想い」に成長しなければならないと真剣に思ったのです。