第四十四章 殺戮のクライマックス(4)

人間同士の殺し合いでベトナム戦争と湾岸戦争について神であるわたしからの見解を申しあげておきましょう。
アフガン戦争はベトナム戦争と同質のものです。
この戦争は、結果は逆になっていますが、本質は実は同じところにあるのです。
やはり、欧米帝国主義の所産です。
だから、テンシの仕業だと断定出来るでしょう。
ただ、それまでの戦争と変わってきたのは、いわゆる強者が勝利を収められなくなったことです。もちろんテンシの計らいもそこに働いていますが、最大の理由は人間にとっての地球が狭くなったことが原因でしょう。
それまでの戦争は、戦地の状況をリアルに報道する術がなかったから国家政府が自分たちの都合のいいように情報操作できたのですが、このふたつの戦争はまるで、お茶の間で戦争映画を見るように現場の状況が国民にも分かるようになったのが大きいでしょう。
戦争の現場は所詮殺し合いです。そこにルールも仁義もない。殺すか殺されるかです。その場面は残酷です。
そうすると、近代兵器を駆使して責めまくる状況がつぶさに放映されると、責める側は余り残酷なことが出来なくなる。当然相手に与える攻撃力が落ちる上に相手はゲリラ戦だから表に現われない。何か強国がひとりで責めまくっている。しかも相手が丸腰の一般市民になる。こうなったら正義はどちらにあるか。
世界の強国の特徴のひとつですが世論を気にする。大体において悪いことをこそこそやる奴ほど世間の評判を気にするから、表面に自分たちのやっていることは正義だとアピールしたい。戦争の勝負よりそちらの方を気にする、とにかく自分の信念がない軟体動物のようなものですから、ころころ変るまったく信用できないものです。これは国家であっても、個人であっても同じ人間の特徴です。
だから、ベトナム戦争では悲惨な目にあったアメリカ兵士が体の傷よりも心の傷を深く受けたのです。
湾岸戦争でもそうです。放送で見ていた世界の人間は何かテレビゲームでもやっているような感覚しかない。そしてあれだけ攻撃している映像が映れば一般市民にも攻撃していると思われる。それが当時の多国籍軍(昔は連合軍と言っていたのが、多国籍軍に変っている、この理由が分かりますか)のトップには一番気になる、だから陸上戦になって勝利を収めたにもかかわらず敵国まで侵入して行かない。おかしいと思われませんでしたか。だから敗者の国の支配者が今でも厳然とそのまま居座っている。
第2次世界大戦の時、勝利した連合軍は何をしましたか。相手国に堂々と進駐し、戦争犯罪者の裁判をやって処刑したのですよ。
それが、湾岸戦争では敗戦国の支配者が何の咎も受けないでいる。どうしてだと思われますか。勝利していないからではないでしょうか。
それともうひとつ見逃してはならないのは報道機関の権力がどんどん強くなってきたということです。これが一番の問題になると思う点ではテンシと意見は一致しています。
結局、このふたつの戦争では、勝利者は報道機関であったのです。敵対国は共に敗戦国だったということです。
ここに人間社会の権力構造のパラダイムの大きな変化が顕著に表れています。
テンシもこのパラダイムの変化は予見出来なかったようです。それだけにテンシの性格ですから戦略を練って、あと5年以内に新しい化け物を徹底的に処罰すると、以前にタンカをきっていました。
多分、今はどこかで、その戦略立案に集中しているのでしょう。
この点に関してはわたしと同じ意見などで、一度会ってみて相談をしたいと思っているのですが、姿を現しません。
ちょっと、イクサから漏れ聞いたところでは、とにかくけじめをつけさせる国や組織や人間が多すぎて、処罰リストを作成しているらしい。そして実に楽しそうに口笛を吹きながら、ルンルンとしているらしい。我が子ながら苦笑してしまいます。