第二十四章 泣き声の実体

地球のあっちこっちから泣き声が聞こえてくるのに堪りかねて、わたしは日本から初めて地球上の探索の旅に出かけることにしました。
泣き声の聞こえてくる方角はユーラシア大陸の西からアフリカ大陸にかけてでした。
わたしは普通の人間になりすまして旅することにしました。その方が狡猾な人間に察知される恐れがないからで、彼らは宇宙の「想い」であるわたしたちの存在を明確には分かっていないが、何か人間を遥かに超えた存在があることには気がついていたからです。
わたしの存在を察知されると、彼らは自分たちのしていることがどれほど極悪非道なことか認識していただけに、ほとぼりが冷めるまでは態度を改めるポーズをし、神の祟りを鎮めるといって偽善的行為をするしたたかさと慎重さを持っている人種だから、こちらもいろいろ戦術を考えて行動する必要があるのです。
まず、わたしは日本の僧侶の姿になりました。その方がどこの国に行っても危険が少ないからです。特にこの時代の宗教者は支配者連中と連合して地球上の富の独占をしていた特権階級だったから、どこの国に行っても宗教者は一目置かれていて、旅をするのには非常に便利でした。
それぞれの国の宗教に合わせた宗教者になればいいのです。
日本を出るときは僧侶になり、他の宗教の国に入ればグルになったり、ムラーになったり、ラビになったり、神父になればみんな尊敬してくれます。
そして宇宙の真理を説いてまわるといった巧妙な方法を採りました。
人間の中には、、数は少ないけれど、わたしたち「想い」のことを理解しているものたちがいるので、まず彼らと出会うことが一番大事だと思ったからです。
もちろん、テンシのように一気加勢に懲らしめるという方法もありますが、わたしは性格的に過激な行動をすることが合わないのです。
日本を発ってまず、ユーラシア大陸の東端に上陸しました。
このあたりの国は細かい点では違いましたが、基本的には日本の宗教と同種でした。
日本のすぐ上にある国からその西にある大国と旅をしましたが、結構みんなそれなりに安定した国情で、支配者たちも宗教者たちも一般大衆も格差はもちろんありましたが、そこそこの状態で、わたしが口を挟むほどではありませんでした。
ただ宗教者に極めて優れた者がいなかったのが残念でした。三大宗教のひとつを生んだ大国もまだ安定した状態でしたが、この大国も前の大国もかつては非常に優れた宗教者を輩出していただけに、期待外れであったことは否めません。
後の話しになりますが、結局これらの大国も優れた指導者や宗教者、つまり3%の部類に入る人間がこの時代に現れなかったことが、侵略を始めたヨーロッパの人間たちの餌食になる羽目になるのです。
一方、その西にある同じ言語を使うふたつの国は、ヨーロッパの侵略に遭いますが、優れた一人の宗教者がいて、ヨーロッパの人間たちの侵略にくじけず断固自分たちの考えを貫くよう支配者たちを啓蒙したため、侵略から完全には抗しきれなかったが、さきの二つの大国のように屈辱的な事態だけは避け得た。これは、この人間の大きな存在があったからだと言えます。
しかし、この人間も内部の裏切りにあって暗殺されることになるのですが、さきの二つの大国のようにその後何百年も屈辱的な支配を受けずにすんだのは、このひとりの人間のおかげだと言っていいでしょう。
それだけ3%の人間がいるかいないかで一つの国の命運を決める結果になるのです。
それにしても97%の部類の人間のおそまつさにはあきれるばかりで、自分たちの救国の士を裏切り、見殺しにして国を破滅の道に追いやる。まったくテンシが怒るのも無理ないと、この点では同じ思いをしたのです。
その西にある砂漠の国となった、かつての文明発祥の地はもう既に侵略され、アフリカの文明国家であるエジプトなどは、国家の財政をヨーロッパの二つの国に管理される始末で、収入と支出をそれぞれ別のヨーロッパの国が管理する。どうもこの国は太古の時代から他の国の人間を奴隷にしたときもあれば、今度は自分たちが他の国の奴隷になるといった宿命を負った国のようです。やはり3%の人間がいなかったからだと言えます。
とにかく人間が犯す一番の罪は、同じ種類の動物を奴隷にして、恰も、同じ動物でないかの如き扱いをすることです。
この罪を犯した人間は必ずいつか、自分たちもこの罪に犯されることになるのです。
これは宇宙の法則です。
そのエジプトの下方から、わたしが日本にいるときにも聞こえていた悲惨な泣き声が大きく聞こえてきたのです。
わたしは戦慄する思いで泣き声の方へ向かいました。
この後のわたしが見た光景は、もうここで語る力をわたしから奪い去りました。
今日はここまでにしておきたいと思います。