第十四章 神は あっちこっち

わたしの父の太陽を肉体として持っているヒカリは怒りもなければ疑うことも知らない本当にすべてを信じる「想い」でした。
いっぽうわたしの子である月を肉体として持っているテンシは自信の権化のような「想い」でした。
たしかに、そう言えば納得できる点があります。
父のヒカリの存在は祖父のギンガも曾祖父のイシキも一目も二目も置くぐらいの大きな存在です。
いずれはギンガもイシキをも超えたこのイシキの宇宙だけでなく、他のすべての宇宙をも含めた父になる存在なのです。
以前、あと50億年後にわたしたちを引き連れてブラックホールになり、そこからホワイトホールへのトンネルを通って反物質の宇宙に移り住むことになっている、と父のヒカリが言っていたことがありましたが、実は父の役割はそれほど大きなものだったのです。
だから父のヒカリには信じる「想い」しか必要ないのです。
わたしの子である月のテンシはわたしたちヒカリの一家が新しい宇宙に移るとき一番大事な役目を持っているのです。最後に月が新しい宇宙への宇宙飛行船になる役割をヒカリから与えられたのです。
それほどの能力をヒカリから認められたのです。
だから自信満々になるのもしかたありません。兄のクウや弟のイクサも性格はテンシに似ていますし、行動力、知力も優れたものを持っていますが、すぐに自惚れる欠点を持っているのです。父のヒカリの話しでは彼らの着ている大気の生地が炭酸ガスであることが自惚れの原因だと言っていました。
わたしが優柔不断なのはわたしの着ている大気の生地が酸素だからとも言っていました。
だから、わたしはいつもあっちこっち 行ったり来たりの迷いの連続なのです。
だけど父のヒカリの話しでは、それがわたしが地球の神になった理由だと言っていました。それだけ優しい愛のあふれた「想い」でないと、とうてい地球の特に怪物のような人間など相手に我慢など出来ないのだそうです。
だからテンシがしばらくの間はわたしに取って替わって、人間という怪物を懲らしめることになっているのです。わたしでは手に負えない化け物なのです。
だけどまたそこがわたしのいいところだと父のヒカリは慰めてくれました。
クウやイクサはあっち、テンシはこっち、わたしはあっちこっち だそうです。
だから わたしは新しい宇宙に移ってもあっちとこっちを往復することになっているのです。まだ50億年後のことですが。
ただしばらくの間は、地球の「想い」はわたしですので、テンシからはいろいろと月から応援はしてもらいますが、地球上での仕事はわたし独りでやっていくつもりです。
いくら、狡猾な賢い人間でもしょせんわたしが創ったものです。
それに振り回されるようでは話しになりません。
しかし、油断は出来ない相手だと思うと、ちょっと不安もあるのが正直な気持ちです。