第一章 わたしの幼少時代

わたしが生まれたのは わたしの曽祖父の宇宙が生まれた100億年後のことです。
父は太陽と言って、父の太陽が生まれてから20億年後に兄の水星、金星に続いて地球という名で生まれました。
だからと言ってわたしの名が地球というのではありません。誤解しないで下さい。
わたしは 太陽や地球といった形のあるものではなくて、そういった形のあるもの、すなわち肉体といってもいいでしょうが、その肉体の中で住んでいる「想い」といったものなのです。
肉体は想いによって動かされています。飛行機と飛行機のパイロットとの関係みたいなものです。
わたしがパイロットで、地球が飛行機ということになるでしょう。
だから、わたしが地球を操縦するようになった訳ですが、何故か知りませんがそのときから わたしのことを神とみんなが呼ぶようになりました。
曽祖父の宇宙を操縦する「想い」は「意識(以後 イシキ と呼ぶ)」という名前で、祖父の星雲を操縦する「想い」の名前は「銀河(以後ギンガと呼ぶ)」、父の太陽を操縦する「想い」の名前は「光(以後 ヒカリ と呼ぶ)」という名前だったようです。長男・水星の「想い」の名前は「水(以後 ミズ と呼ぶ)」、次男・金星の「想い」の名前は「空(以後 クウと呼ぶ)」という名前だったようです。
何故 地球の「想い」であるわたしの名前が「神(以後 カミと呼ぶ)」になったか知りません。
長男のミズは常に父のヒカリと一緒のときが多く、わたしは次男のクウといつも遊んでいました。クウはわたしの性格とまったく逆の性格を持っておりましたが、父のヒカリが「お前たちは、いつも一緒にいなさい。性格が完全に反対だから、お互いに助け合うことが大切だ」と言っていたからです。父の命令は絶対でしたので服従していましたが、実はわたしとクウはいつも喧嘩しては、まったく口もきかないことの方が多かったのです。
クウとわたしは2億歳の違いで、わたしが凸とするなら、クウが凹といった感じで喧嘩しては、仲直りし、仲直りしてはまた喧嘩するといった具合で幼少時代を過ごしました。
わたしの体である地球は酸素ガスという生地で出来た大気という服を着ていましたが、クウは炭酸ガスという生地で出来た大気という服を着ていました。
父のヒカリや長男のミズは大気という服は着ずにガスという生地そのものを覆っていただけでした。
あるとき、父のヒカリに
「どうして、お父さんや、ミズ兄さんは ガスという生地を纏っているだけで、わたしやクウみたいに、生地を縫った服を着ないのですか」と訊ねると
「お前とクウとは、30億年後に一緒に住むことになるだろう、そしたらいつも一緒だから、何もかも丸見えだとお互い飽きてしまうといけないから、少し隠してお互い解らないところがあった方がいいと思ったからだ」と答えてくれたので、わたしもクウも、充分理解出来なかったが父の言うことは絶対だと信じていたので納得していました。
父が怒ったら自分たち子供は生きていけないことをみんな知っていました。実はミズ、クウ、そしてわたし以外に父は1700以上の子供を持っていましたが、父に逆らったために、追い出されて 今はどこにいるのか 迷い星になっているのです。中には追い出されて、せいせいとした気分だと言って、自由気ままに遊んでいる星もたくさんいますが、わたしもクウも父には絶対服従しています。
父に対するこういった思いが、反動となったのか、わたしが操縦する地球という肉体にはわたしは絶対服従を命じてしまったのです。地球は常にわたしにピリピリしながら気を遣っていて、わたしの言うことには絶対に逆らうことはしませんでした。
今から考えてみますと、それが良くなかったのかもしれません。
絶対服従は別の見方をすると、完全依存ということにもなります。その完全依存が地球を甘やかす結果となってしまって、わたしは後悔をし、しばらくは寛容な態度で地球に接するようになったのは もうそれからだいぶん経ってからのことでした。
だけど、幼少時代のわたしはいつもクウと無邪気に遊ぶことが続く楽しいものでしたから、地球に対する寛大な想いもそれほど忍耐の要るものではありませんでした。
クウもわたしと一緒に遊ぶことが楽しかったと思います。
しかし、楽しいことはそう長く続くわけがありません。
それが、わたしが青年になったということだったのでしょうか、神として地球を操縦する術も知識も増えてきたとき、自分の中に大きな変化が起きていたのです。
神であるわたしは、如何にあるべきか、どう行動するべきか、どう地球を操縦するべきか、といつも考える時が多くなりました。
それが、わたしの一生において大きな事態になるとは、そのときは気づきませんでした。
わたしの幼少時代は 初恋の人を見て ただ歓喜し、かける言葉もなく、呆然とした、迷える少年であったと思います。
だけど、わたしの肩には地球という大きな荷物がのしかかっているのです。
しかも、その地球はどんどん密度が濃くなって重くなっている。
わたしは もっとしっかりしなければならないし、もっと鍛えてどんどん重くなるこの地球を支えなければならない運命を背負わされていると思うと目の前が真っ暗になる気持ちでした。