第六章  若き事業家

サクラメントの駅を降り立ったボブは、サンフランシスコと趣がまったく違うこの町が気に入った。
オールドタウンは特に、今でもゴールドラッシュの雰囲気が漂い、西部劇に出てくる町そのものだった。
二十才のボブでも、この町では力さえあれば年齢なんて関係のない、まさにアメリカンドリームの町だ。
そもそもアメリカという国自体が若くて、開拓の時代からフロンティアー精神が大事にされ、年齢からくる経験は却って進取の精神をなくすると思われてきた国である。
ドイツで発明された自動車だが、1908年にヘンリーフォードによってT型自動車が開発された結果、爆発的な勢いで普及したのがアメリカだった。
そしてその後、鉄道に代わってトラックが運搬手段として普及し始めた時代に入っていた。
それまで物流の手段は鉄道であったが、ジェイコブがレタスの商売で失敗した経験から、ボブはトラックで物を運ぶ商売を考えた。
道路の整備がまだ不充分な時代であったが、自動車の爆発的な普及からみて、将来は鉄道が自動車に取って代わられると直感で思ったボブは、大陸を横断する運送会社を設立した。
会社設立当初、ボブは三台のトラックを購入し、三人の長距離ドライバーを雇った。
車を運転しているだけで楽しくてしようがないと言う同じ世代の青年を雇い、彼らも経営者の一員に入れた。
自分が頑張って会社が儲かれば、自分も儲かる。
彼らは必死になって全米中を走りまわった。
ボブは、ジェイコブがレタスの商売をやっていた頃のお客をよく知っていたので、鉄道に代わって、自分たちのトラックで運ばせて欲しいと彼らに営業活動を展開した。
ボブの話に最初に乗ってくれたのが、大豆の投機で一緒に儲けた時のウェスティン家のトミーだった。
トミーは、ボブの事業のセンスに天才的なものを見抜いていたから、今度のトラック運送業にも、投資したいと申し入れしてきた。
しかし、ボブは投資よりも、トミーのやっている穀物の現物取引の搬送をさせて欲しいと頼んだ。
「トラック運送は鉄道と違って、時間が正確でないから、リスクがあると思う」
と言うトミーにボブは反論した。
「それじゃ、もし約束の期日に間に合わないことになったらペナルティーを払うよ。それで損失をカバーしてくれたらいいだろう?」
「そんな商売していたら、すぐに会社は潰れてしまうよ。俺も投資をしたいと言ったが、やめとくよ。しかし、その条件なら、俺の客への搬送はみんな、お前に任せるよ」
「ありがとう、トミー」
これが事業家ボブの初めての仕事だった。