第二十九章  キム消える

ジョンの運転するトラックはサリナスの町に入っていった。
途中、反対車線を猛スピードで走り抜ける車と出会ったが、二人は気にもかけず、前を見ていた。
その車の中から、女性の腕が必死に二人のトラックの方に向かって振られていたが、二人は全く気づかなかった。
家に着いた二人は、様子がおかしいことに気がついた。
感の鋭いボブは一瞬、
「キム!」と大声で叫んだ。
ジョンもキムに何かあったと感じて、玄関のドアーを突き破るような勢いで中に入っていった。
「キム!どこにいるんだ!」
ジョンが奥の部屋の方で叫んでいる。
『あの出会った車だ。あの中にキムがいたんだ』
ボブは確信した。
ボブは猛スピードで走り去った車のことを必死で思い出そうとした。
『あの時、一瞬だが嫌な予感がした。確か、あの車は黒塗りのサンダーバードだった。走り去って行った後、フリスコ方面にハンドルを切ったはずだ・・・』
その時、呆然とした様子のジョンが奥の部屋から出て来た。
「キムが消えてしまった!」
「さっきの車だ。あの中にキムがいたんだ!」
ボブの話が理解出来ないジョンは、「じゃあ、誰かがキムを・・・。一体誰なんだ?」
「カインはサンフランシスコのトミーに預けていると言ったね。トミーに電話するんだ!」ボブは叫ぶように言った。
「僕の名前を出してはいけないよ」
頷いたジョンは受話器を耳につけて必死にダイヤルをまわした。
「誰も出て来ない」
ボブは必死に考えた。
ジョンは部屋の中をうろたえて歩きまわるだけであった。
今まで、生き馬の目を抜くような事業をやって来たボブだけに、こういう状態になればなるほど、冷静な判断力が発揮される。
『裏を見るんだ。現象の裏を見るんだ』
その瞬間、ボブの脳裏にある光景が現れた。
「そうだ!分かった」
大声で叫ぶボブを見ていたジョンは何が何だかさっぱり分からなかった。